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2012年12月

2012/12/05

地震

横浜の団地に、妻・さなえ、そして息子・春利と一緒に暮らしていた頃を無意識に求めているのだろうか。

桑田荘太は、小田急線の駅から町田へ出て横浜線に乗り換えた。

新横浜で降りた桑田は北口改札を出て腕時計を見た。11時半になるところだった。空腹を感じた。朝は食パンにジャムを少しつけ、牛乳で軽く済ませてきた。

前年末に入った飲食店に先に寄ろうと思った。昼の12時前後から午後1時くらいまでは、周辺で働く人で混雑が予想された。新幹線口のある広場を抜け、エスカレーターに乗った。人の流れに従い、オフィスビルやホテルが並ぶ前方を仰ぎ見ながら左折して屋外歩行者デッキを歩いた。金曜日だが人の流れは途切れなかった。

信号待ちは一つだけで、そこを渡ると目当ての飲食店はすぐだった。
店内の客は数人だった。豚鮭定食をオーダーして、それほど待たずに届けられた。桑田が食べ終わる頃、オフィスビルの社員だろうか、上司と連れ立ってどっとやってきた。持ち帰りの客もカウンターの所に並んでいた。

図星だと納得しながら、桑田は480円を払って表へ出た。
やり過ごしてきた目当ての新横浜駅の新ビル内にある書店へ行く前に新横浜駅前公園を歩いて来ようと思った。食後にウォーキングすると血糖値が抑制されるし、頸椎症にも良いだろうと日頃から思っている。

そこへ足が向くのは、前回来たときに出会えた猫たちのことが頭にあった。この時間だと猫たちに餌をやりにくる女性はまだ来ていないだろうが、猫たちには出会えるかもしれないと思った。


To Be Continued

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2012/12/07

地震

桑田は烏山川に沿って続く新横浜駅前公園に行ったが、橋の下の平らなコンクリートの辺りにも公園内にも猫たちの姿を見つけることが出来なかった。どこに潜んでいるのだろうと思いながら、腹ごなしにもう少し歩いてからにしようと、日産スタジアムに向かって歩き始めた。

10分余りかかる舗装されたスタジアムの外周を一巡りして桑田は階段を下りていった。鶴見川の遊水地を利用して造られた運動公園だという案内板が目についた。

トラック競技場を左に見て、中央広場に歩を進めて行った。前方の長い陸橋上を車がスピードを上げて走っている。桑田が陸橋の下に差しかかると、右にスケボー広場があり、10人近い若者が衝撃音をたてながら半そで姿で滑っている。ヘルメットを被っているのは二人だけ。左手にはバスケットボール広場があるが、そちらには誰もいない。

多目的トイレの案内のある近代的で小ぎれいなトイレにより、草地広場をまっすぐ進んだ。よく整備されている芝生が心地よかった。通り過ぎてきた駅前公園とは比べようもないほど広いことが実感される。ここの管理も大変だろうと、スタジアムの赤字経営の実態記事を読んだことを思い出す。

草地広場の終わりまで行くと円形の池の向こうに水門があった。桑田は眼前の小さな橋を渡った。そこを渡ると、鶴見川の氾濫時に園内に水が入ってくる勢いを抑えるために造られた長くて大きな減勢池が続いている。鴨の群れが鳴き声を発しながら泳いでいる。池に沿って続く舗装された道を行くと、後ろからトレイナー姿の女性が桑田を抜いて行った。

路の脇に距離を置いて並んでいる背もたれの無いベンチに腰を下ろすと、後ろの芝生を甲斐犬を連れた高齢者がリードに引かれるようにしてやってくる。

と、向こう岸の水草の辺りへ一羽の小ぶりの白鷺が舞い降りた。


To Be Continued

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2012/12/09

地震

長い外周路を歩き、ネットの向こうの野球場を見ながらコーナーを巡った桑田は、並んでいるテニスコートの数をかぞえながら遊具広場へ向かった。その中の健康遊具に目がいったからだった。

路の反対側のサッカー場には誰もいなかったが、周辺の緑の芝生が安らぎを与えてくれる。

遊具広場には幼児を連れた母子があちこちにいたが、ネットクライミングに人気があるらしい。桑田は、そこから少し離れた所にある背伸ばしベンチに行った。背中をゆっくりと大きく反らせた。3度ほどやり今度はぶら下がりストレッチへ。ジャンプしてもう一段上にぶら下がろうとしたが無理だった。一段下の鉄棒につかまったが、しばらくすると左肩が痛んだのでやめた。次に腹筋ベンチに仰向けになって寝た。ゆっくりとだが5回が限度だった。

そこから40分余り歩いて桑田は新横浜駅に戻った。目当ては、キュービックプラザ新横浜という名の駅ビルにある書店だった。駅とは2階で連結されているので、下からだとエスカレーターで上り、そこからは場所は移動するがエレベーターもある。

新幹線の駅ということもあり大勢の人で混雑している。桑田はエスカレーターだけで上の階へと移動して行った。目当ての書店は8Fだったが、5Fの家電売り場に立ち寄り、次に6Fのパソコン売り場に行った。すぐには買えなくても最近の新型ノートパソコンはいくら位になっているか知りたかった。

ぐるっと店内を回りエスカレーター乗り場に向かっている時だった。桑田は一瞬妙な感じに襲われた。足元が定まらない感じだったが、まわりの客は何かにつかまろうと右往左往していた。

じ、地震・・

そばの壁や柱につかまろうと数人の高齢者が小刻みに歩を進めている。揺れは続いている。店員も立ち止まったままだ。

数メートル離れた天井の何かがはがれて桑田の側へ落ちてきた。桑田も揺れる床をこわごわ移動して高齢の女性がつかまっている壁に手をやった。この頑丈そうな新しいビルがこれだけ揺れるということは大きな地震に違いないと思った。 


To Be Continued

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