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2013年03月

2013/03/03

3月11日 上海

「ハイ、イシバシデス。タダイマルスニシテイマス。ゴヨウノカタワピーットイウオトノアトニメッセージヲオネガイシマス」

来未の声だった。

春利は、来未の賃貸マンションの留守電に、メッセージを残した。

再びメールをチェックしたが返事は入っていなかった。心臓のドキドキを覚えながら、春利は今度は来未の携帯へ電話してみることにした。

008190・・番号を確認しながら押して行った。

「電源が入っていないか電波の届かないところに居ります」

受話器を置いた春利は、来未の同僚の沙希のことを思いだした。しかし、彼女のメアドも電番も知らなかった。

アドレス帳には課長と後輩の佐野の連絡先があった。春利は営業で同行したことがあり気心も知れた佐野にメールしてみようと思った。

直接来未のことを訊けなくても、東北地方の営業所の様子や日本での地震の現状や社員の状況もある程度分かるのではないかと思った。

春利がパソコンの方から佐野にメールを打ち終えた時、そばの固定電話のコール音が室内に響き渡った。

置時計は夜の10時を回っていた。


To Be Continued

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2013/03/10

3月11日 上海

春利は、受話器をとって「はい」と言った。

「沢君・・ああ、宮里です。日本で大地震があったこと知ってるよね」

声から上海支店長の宮里徹だとすぐ分かったが、その時間に自宅に電話が入ることはなかったから一抹の不安がよぎった。

「ええ、ニュースで観て。うちの会社の支店は大丈夫だったのでしょうか」

「その件で、東京の本社や名古屋支店に電話してみたんだがね。秋田、仙台、福島は、社員の数も少なく、支店というより営業所と言っているが、仙台と福島は連絡がつかないらしいんだ。3時間ほど前のことだけどね。それもだが、君に知らせた方が良いのかどうか私には分からないが・・」

「僕のことで何か?」

「上海に来る前に君のいた名古屋支店のことなんだが、吉田沙希って子がいただろう」

「ええ・・」

「あの子が、安藤課長に、石橋来未君が福島に行ってくると言って金曜日に休んだのだが、大地震があったので心配になって連絡したが、連絡が取れないので心配だと言ってね。なんでも、実家は最近会津若松から、いわき市の海に近い久ノ浜の方へ越したとかで、それで、君に知らせた方が良いんじゃないかと聞いたものだから。たぶん、吉田君が課長に君のことにふれたと思うんだ」

「そうだったんですか、ありがとうございます。実は、僕も連絡取っているのですが、つながらないんです・・」

来未の実家が、久ノ浜へ越したことも初耳だったが、来未は沙希に僕とのことを話していたんだと思い、社内に知られてしまったことに戸惑いが起こった。だが、今度の地震の被害が想像もできないものかもしれないという不安の方が大きかった。


To Be Continued

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