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2015年01月

2015/01/01

世界の向こう(武蔵野)

武蔵野八幡宮の入り口に向かって歩いていると、道の脇を掃いているお婆さんがいた。ミナは声を出して挨拶した。

お婆さんはにっこり笑って頭を下げた。神社内に人がいないことを願った。見られては困ると思った。エイリアンは上空から見ているから、タイミングを外すことはないだろうと思ったが、ほんとうはどうなるか分からないとも思った。人目を無視して行動するかもしれない。

グレイの鳥居をくぐると、両側に齢とった樹木が点々と立っている。人の姿は見当たらない。来るなら早くして、と思った時、上空でかすかに唸る音がした。

まぶしい光がはしり、次の瞬間、ミナの身体は上空に浮き上がった。数秒のことだった。

機内に入ると、前回と同じ宇宙服を着ているエイリアンの姿があった。

「今日は、一人だけですか?」

「そう」
続いて、後ろの席に掛けなさい、という意思が伝わって来た。

「あなたは、私がどこにいるのかいつも監視しているんですか?」

「いや、そう思った時にさがせばすぐ分かるのさ」

「あなたは、どこからこの地球へ来たんですか?」ミナは日頃から疑問に思っていることを口にした。

「地球人がどのような名を付けているか知らないが、この島の人間には、見えない。我われの方が視力がずっと良いが、この乗り物で移動しないと、我われがやって来た星は見えない」

「日本からは見えない星。じゃあ、南半球からなら望遠鏡で見える?」

「我われのように宇宙を飛んでいる者は、地球人のような北とか南とか上とか下という感覚はない。それに、我われの呼び名で言っても分からないだろう」

「ああ、そういうこと。日本列島からは見えないんですね」

To Be Continued

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2015/01/06

世界の向こう(賀茂川)

「もう一つ訊いてもいいですか?」

「なに?」

「あなたは、いま、どこに住んでいるんですか?」

「それは、こたえない方がいいだろう」

「知られると、都合がわるい?」

「そう。キミから情報がもれては、我われにとっても、地球人にとってぐあいがわるいこともあるだろう」

「わたしは、あなたはアメリカのあそこではないかと思っていたけれど」

「そうか。しかし、キミのようにわれわれを怖れない人間もめずらしいな。われわれと共通のDNAを、ほかの地球人より持っているのだろう」

「そうですか。少しだけほかの人より違っているかもしれないけれど。やっぱり、あのあたりなのね。そこと、この乗り物か、または母船とを行き来しているのではないかと思っていたけれど」

「キミにはそれが見えるのだろう。否定はしない」

「やっぱり。そろそろね」

「あの、川のあたりでキミを降ろす」

「ありがとう。桜が満開ね。今年はいつもより遅かったから」

「この島のサクラ、うつくしい」

「あなたの星にはないの?」

「ない」

「人がいないところへ」

「もちろん。われわれは、地球人よりずっと遠くまで見えるから。いないところへ降ろす」

「ありがとう。賀茂川沿いなら、どこでも大丈夫だから」

「OK」

To Be Continued

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2015/01/15

世界の向こう(賀茂川)

わたし、ベルトは締めていたけれど、あの乗り物は、飛行機よりは速かったと思うけど、火星の上空へ行った時とはだいぶ違っていたと思う。

外の景色は飛行機に乗っている時のようには見えないけれど、体感というか、飛行機よりは高い所を東京上空から日本列島の京都へ移動しているっていうか、そのように飛んでくれたのではないかと思う。

だから、ある空間から別の空間へ移動する方法はとらなかったと。近い距離だから飛行機のように飛んでもいいわけですよね。

以前は、そんなことを考える余裕もなかったけれど、たびたび現れる、あの小さなエイリアンを信じようって、思うことにしたの。・・

春利は、子供たちが帰った後、ミナから届いたメールを読んでいた。

春利と別れたミナが、あれから数日後に、またエイリアンと出会っていた。シャンハイの公寓の上空から意思だけを通じ合った春利とは違い、ミナは彼らの乗り物に便乗して空間を移動している。

それにしても、来未と春海さんは今どこにいるのだろう。津波に呑みこまれ、混濁の海の底へと連れ去られて行った。

その後、二人の遺体は発見されないままだけれど、上海の中山公園で私のいた上空に現れた。あれは夢なんかではない。では、どうして。死後の世界に行ったと思われる二人は、私の前に現れたのか。いや、ミナさんのところに現れたミナと春海さんは、私のことにふれたという。

やはり不思議だ。二人はいったいどの世界に行ったのだろう。ほかの人に言えば、ゴーストか君の頭がちょっとおかしくなったのだろう、と幻覚くらいにしか思われないだろう。

しかし、ミナさんがいうアストラル界。UFOディスクロージャア・プロジェクトの医師は、体外離脱とか幽体離脱という世界と彼らエイリアンがいる世界は似ていると言っていた。

やはり、別の空間があるのかもしれない。・・

To Be Continued

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2015/01/23

世界の向こう(桜)

春利は4月半ばに川崎の父のところへ行った。メールを送り、すぐ返事が来たので、顔を見に行こうと家を出た。

「父さん、桜の花もそろそろ終わるね。上海にいた時は、公寓に近い所に中山公園というのがあって、けっこう広い公園で、桜の花もあったよ。開花時期は日本とそんなに変わらないと思うけど」

「そうなんだ。一度行ってみたいね。しかし、父さんの生まれた信州では、遅いところでは5月初旬まで咲いている所がけっこうあると思うよ。しだれ桜とか、桜にも種類があるし。時間があれば、一緒に見に行こうか」

「そうだね、今年は塾を始めたばかりで、時間的に遠くへは行かれないけれど、来年ならどうかな」

「あの頃は思うようにいかなくて、春利を私が生れた家には一度も連れて行かれなかったから」

「父さんが生れたとこは」

「私が学校に上がる頃は諏訪郡と言って広いエリアを指していたと思うが、その後それぞれ独立した市が出来たんだね。・・そうだ、思い出したことがある」

「なに?」

「桜の花と言ったら、笑われるかもしれないが・・」

「桜の花の何?」

「駅で降りてここへ来る方でなくて、駅の向こう側すぐの所に、麻生川に沿って古沢辺りまで桜並木が続いているが、散歩がてら花見をして歩いていた時、ちょっと不思議なことがあった」

「いつごろ?」

「震災のあった年の・・」

「どんな?」

「それが、春利の話を聞き、もしかしたらと思って気になっていた」

「それ、来未のこと?」
顔を上げた二人の目が出合ったまましばらく見詰め合っていた。

To Be Continued

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