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2015年05月

2015/05/03

カナの行方

「わたし、一人っ子だって言いましたよね。母は私が高校生のときまで税理士事務所に週3、4回勤めていたけど、視力が落ちてきて、あまり使わない方が良いって医師から言われて今は休んでいるけど、働いていたんです。父は・・」

「カナさん、言いたくなければ無理に言わなくても」

「ええ。でも、早乙女先生には知っておいていただいた方が良いと思いますから。父は、私が小学校5年のときに家を出て、今は、大阪の大学で非常勤で工学部の講師をしていると思うけど、それ前は京都の別の大学に勤務していて、教授も3年くらいやっていたと思います。父は、複数の特許を持っているようで、ちょっと変わった人なんですね。別居はしているんですけど、籍はそのままで、収入はあるので、お金は、大丈夫なんです。私がアルバイトをしなくても」

「そうだったの。カナさんのお父様は、きっとその分野で優れた能力を持っている方なんでしょう」

「私は、駄目なんですね」

「いえ、カナさんはその才能を継いでいるのかもしれないわ」

「父は、何か研究したいことがあって、それで一人になりたかったのかもしれないと思っています」

「カナさんは、お父様からそれについて聞いたことがあるの?」

「くわしいことは分からないけれど、エネルギー関係ではないかと」

「えっ・・」ミナは脳裏にある思いが去来したが、唇を噛んで口に出すのをこらえた。ちょうどその時、小さい子の手を引いた親子連れが、一つ置いた向こうのキッズ用のイスがある席に着いた。「おにぎりセット」が良いかな、という父親の声がする。

「早乙女先生、私がエイリアンに連れて行かれたのも、私たちがエイリアンの乗り物に遭遇して、火星の上空まで連れて行かれたのも、ただの偶然ではないかもしれませんね」

「そうね・・」

To Be Continued

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2015/05/15

別な空間

春利がミナから連絡を受けたのは一か月ぶりだった。スマホに入ったメールには、遅い時間だけど、パソコンにスカイプで連絡しても良いか、と言ってきた。

「気になることがあるので言ってもいい?」
ミナの生徒だった渋江カナが退院して、先月末にフィンランドへ発ったという報告を、画面に映し出されたミナの顔を見ながら聞いた春利は、思い切って口にした。

相手が大きく頷いたことでほっとした春利は深く息を吸った。

「カナさんて、一重まぶたで目元が涼しいというか凛々しいというか、それで、笑うと、左側の口元にエクボが出来る人じゃないかな?」

「ええ。沢さん、貴方も・・」

「いえ、こんな体験は初めてだけど、4日前、ベッドで寝ていたことは確かだけど、会ったこともない女性が夢に出て来るなんて。それが、その夢の中で、わたし、フィンランドへいくことになったんですって、その女性が言った時に、口元にエクボが出来て、それが、鮮やかに記憶されていて、夢とは思えないっていうか」

「沢さん、それは夢ではないかもしれないわ。私は、そうしたことが良くあるから。昼間でも」

「夢ではない、ということは」

「その時、別の空間にいった」

「別の空間。早乙女さんはそういうことがよくあるんですね」

「ええ、今では特に違和感もないわ」

「じゃあ、僕が見た人は、間違いなく、その、渋江カナさんで、彼女は6月末にフィンランドへ発ったんですね」

「ええ。カナさんは、入院中にお母さんに頼んで、留学先について調べてもらっていたみたい。それで、パスポートも持っているし、退院してすぐ手続して。だから、私が相談を受けたと言っても、予定は進行していて、フィンランドの大学が提供する夏季の語学コースに行ってスウェーデン語をやるという方向に」

「その後は・・」

「ええ。その後、本来なら9月入学は、1月から3月の間に手続きをしないといけなかったんだけど、事情もあるし、日本からの留学ということで、私がアメリカ留学で知り合った友達を通して、便宜をはかってもらえるか、お願いしてみたところ、現在フィンランドの大学で講師をしている知人が動いてくれて、決定はしていないけれど、たぶん大丈夫だろうって」

「それは、良かったですね。それで、何を専攻したいと?」

「それが、沢さんのお父様と同じ、神学を」

「えっ、カナさんは、早乙女さんの大学では、理工系でしたよね?」

To Be Continued

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2015/05/24

別な空間

春利が横浜の駅に近い喫茶店で父と会うことになったのは、ミナとスカイプで話してすぐの日曜日だった。良かったらちょっと話したいと電話したのは春利だった。

その日、春利は地下鉄で、荘太は小田急と横浜線を利用して横浜へ出た。西口に近いところで比較的静かな店があるからとは荘太の提案だった。日曜日でも午前中だと混まないだろうからとの荘太のことば通り、比較的広い喫茶店のフロアには二組の客しかいなかった。

「父さん、僕の友達の早乙女さんの生徒だった女の子が、理工学部を辞めてフィンランドへ留学したんだけど、夏期ではスウェーデン語をやり、9月から正式入学するらしいんだけど、それが、父さんのやった神学らしいんだ」

「ほう、神学を。それで、フィンランドの大学で、スウェーデン語とは」

「それがね、神学を学べる大学ということで選んだらしいんだけど、そこは、フィンランド語でなくてスウェーデン語が主な言語らしいんだ。外国人は英語でレポートとか書いてもいいらしいんだけど」

「短期間でスウェーデン語が使えるようになるのは大変ではないかな」

「そうだね。何か事前に調べて準備していたようだけど。ちょっと特異な人みたいだから」

「というと」荘太が周囲に目をやり、トーンを落として言った。

「それがね、父さん。例の問題が関係しているようなんだ」飲み物が運ばれてくるところだったので、春利もトーンを落として言った。春利はコーヒー、荘太は野菜ジュースだった。すぐにサンドイッチをお持ちします、と店員が踵を返した。

「カナさんて言うらしいんだけど、一度はさらわれたというか、何もなかったようだけど。それに、二人は火星の上空まで彼らの乗り物で」

「アブダクションみたいなことがあった上に、火星の上空まで行ったんだね」

「そんなことも関係したんだと思うけれど、大学病院の精神科へ入院して・・」サンドイッチが運ばれてきたので、春利はいったん話を止めた。

「退院後、復学しないで今度はフィンランドへいったんだ」

To Be Continued

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2015/05/28

別な空間

「うむ、それは特異と言えるかもしれないな。この時代、何を探求してもとやかく言われることもないだろうが、しかし、私などは経済力がないから無理だが、その、カナさんとかいう人は、経済的に裕福な家庭なのかな」

「早乙女さんが言うには、お父さんという人は、別居しているけど籍は入っていて、研究者みたいで、いくつも特許を持っていて、お母さんとカナさんんが暮らすのに充分な生活費はちゃんと入れているようなんだ」

「ほう、それは、有能な方なんだね。じゃあ、現在は」

「うん、以前は大学教授だったみたいだけど、今は大阪の方の大学で講師をしているとか」

「じゃあ、その特許の方からの収入がいっぱいあるのかもしれないな」

「そう、詳しいことは分からないけど、何かエネルギーの研究をしているとか」

「何? エネルギー・・」

「そう。僕も、早乙女さんからそれを聞き、はっとしたんだ」春利はそこで、サンドイッチを口に入れ、コーヒーカップを傾けた。荘太も思い出したように、目の前に運ばれてきているサンドイッチに手をやった。

「もしかしたら、そのお父さんという人は、フリーエネルギー、あの、UFOの研究者かもしれないな」

「うん、英語も堪能で、アメリカの大学へも留学したことがあるって聞いた」

「ということは、日本では比較的自由に動くことが出来る、例えば、非常勤講師で、アメリカの研究者と連絡を取っていて、ひょっとすると、あちらの大学に籍がある、有能な科学者かもしれないな」

「父さん、すごい。僕もその可能性があるのではないかと思う。あの、カナさんという人も、特殊な能力が備わっているのかもしれない」

「というと?」

「大学病院の精神科に入院したというけれど、早乙女さんは、カナさんの主治医から、病気というより、何か一般人には分からない世界が見えていて、どうしたらいいのか苦しんでいたのではと」

「それでは、言えない世界が見えていて、それを言えば、病気にされるというような」

「うん、そんな領域のことで苦しんでいたのかもしれない」

「なるほどね」

To Be Continued

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