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2015年07月

2015/07/07

別な空間

「たとえば、先生がそれについて話したとか、友達の誰かが言ったとか」

「わたし、言わないようにしていた。先生も誰も言わなかった」サイカはシノの方を気にしながら言った。

「坂木さんのクラスでは、昨日の夕方、空に不思議なものが現れたとかって話が出なかった?」

「私のクラスでは、そのような話はなかったけど、クラスに、ユーホー見たって人はいるよ。もう、前のことだけど、あれ、みなとみらいでだったかな。なんか、上空に、風船みたいなのがいっぱい現れたって」

「あ、そうなんだ」その時、ブザーが鳴って、女の子が二人現れた。

「ちょっと用事があって。すみません、遅れちゃって」

「いや、これくらいならセーフだな。でも、休まないで来てくれたから、良いことだな。じゃあ、始めよう」
春利は、先に来た二人には、またね、と小声で言って目線で合図した。

子供たちが帰ってから、春利は、坂木が言っていた風船みたいなUFOについて調べてみた。

見つかった。UFOの大群が横浜アリーナ上空に現れた、という動画だった。2年半くらい前だったのか。映りは良くなかったが、ときどき光る物体がちらちら見えていた。

ほかにないだろうかとさがしてみると、とてもよく映った写真が見つかった。正に青空一面に散りばめたように光る物体が写っている。

春利は上海にいた時なのでまったく初めて知る情報だった。写真はプロのカメラマンによるもので、ある宗教家の講演会が行われていた上空とのこと。終わったばかりの講演会場から帰る人でごった返していたとある。その上空には、数十から数百機ものUFOが現れ、多くの人に目撃された、と。さらに、後日この宗教家が言うには、当日の多数のUFOはこの説法を拝聴するために来たものだというのだった。

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2015/07/12

別な空間

子供たちが夏休みに入り、春利はその日の午前と午後の授業を終えた。

上海から帰国して初めての夏季講習だった。上海にいたときは、日本に帰り会社を辞めたらインターネットで何か仕事をやろうと思っていたが、具体的に始めたのは学習塾だった。

やっていかれるか不安だったが、夏季から生徒数も小4に男子が2人加わり6人になった。家庭教師の経験はあったが、中学受験の経験がない春利の個人塾へ何故来るのか不思議だった。入塾した2人の男子も中学受験をすると言っている。狭い団地の部屋を利用してのことだから学年と人数を限定していると、問合せの父兄には伝えた。中3の父兄からも電話が入ったが、時間とスペースが限られているからと断った。夏季講習から中1も6人に、中2は7人に増えた。

簡単なホームページで学年を限定して案内していたが、広告費は一切かけていなかった。口コミで広がったのかなあ、とコーヒーカップを傾けながら春利は思う。

気分転換に表へ出た。歩いて数分の所にファーストフード店が複数ある。夜の9時を回ったところだから、ひょっとして生徒か父兄に会うかもしれないが、構わないと思う。まだ夕食を取っていなかった。

店に入ったが、顔見知りの顔はなかった。会社帰りの社員と年金受給者と言った感じの男性だけだった。牛丼の並に野菜サラダとみそ汁。それで充分だった。

少し体を動かした方が良いと思い、横断歩道を渡り家から遠ざかる向きに歩いた。30分余り歩いたが、すれ違うのは見知らぬ人ばかりだった。

帰宅してシャワーを浴びた。翌日の午前中の授業の準備は出来ていた。クーラーを弱く点け、ソファに体を預けた。すぐの所に生徒たちが座る長椅子とホワイトボードが見える。早乙女さんは今どうしているだろうかと思う。教えている大学はまだ夏休みになっていないから、帰宅して授業の準備をしているだろうか。・・

春利は、今まで行ったこともない世界に来ていた。傍らには若い女性がいたが、誰かは分からなかった。しかし、数メートル先にどこか変わった人たちが5、6人寄り合って立っていた。顔が違っているようだ。

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2015/07/13

別な空間

顔が違っているというのは、そこに立っている存在が違った雰囲気の固体というか、日本人とは違うが、姿かたちは似通っていた。

春利は隣りにいた若い女性の方を見た。彼女も眼を見開き、視線は前方の存在に向かっていた。

「キミ、誰だっけ?」

「先生の生徒だった・・」

「先生って?」

「大学で教わっていた・・」

「大学で?」

「ええ」

「僕のこと知っている」

「先生のボーイフレンドだってことは知っている」

「前に、会ったことはある?」

「いえ。でも、私には分かっていた」

「どういうこと?」

「ここに、一緒にいるということがそのわけです」

「ここに一緒にいることがそのわけ?」

「ええ」

「よくいらっしゃいました。私たちは、あなたがたがわるいひとでないことはわかっています」

そこに集まっていた人の方から意思が伝わって来た。
春利と隣りの若い女性は顔を見合わせた。

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2015/07/17

別な空間

「Seele、ゼーレ」という音が春利の内に聞こえてきた。

「あら、地球からの訪問者ね。ようこそ」

春利は相手に拒否されてはいないんだと思った。意思の伝わって来た女性の方へ目をやると、髪が金色に輝いていた。春利の方の注意力が機能し始めたからなのか、眼も碧いことが分かった。

次に振り返るような視線が春利に向かっているのに気付いた。見返していると、どこか共通なものが伝わって来た。

「あなたは僕のことを知っているの?」春利の心の問いが発せられた。男性と思われる相手のことはまったく分からなかった。

「いえ。同じ国」

「同じ国って?」

「日本」

「あなたは日本からここへ?」春利はそう問いながら、自らがいる場所がどこなのか、という疑問がわき起こった。

「沢さん、ここは金星です」隣りの女性からだった。

「えっ? 金星って・・」

「そう。ここは、地球の隣りの惑星、金星の、地下です」男性の意思だった。

「金星の地下。ど、どうして僕は、ここに・・」

「それは、望んだからです」男性の意思が春利には諭すように感じられた。

「僕が、金星に行きたいと思っていたって」

「沢さん。人は自分が望んでいることに気づいていないこともあります」
隣りの女性にそう言われても、春利には納得できなかった。

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2015/07/19

別な空間

「誰か、あなたにそうしてもらいたい人がいたかもしれません」

「僕に金星へ行ってみてもらいたい人がいた」春利は、金髪の女性から発せられた意思に自問自答した。

「もしかしたら」春利の隣りの女性だった。

「もしかしたら・・」春利は同じ問いを反芻した。

「私は早乙女先生ではないかと・・」

「早乙女さんが僕が金星へ行くことを望んだって」

「その、さおとめさんなら、わたしも何度か」

「えっ、早乙女さんがここへ来たんですか?」

「あなた方のように、Seeleです」

「Seele・・」

「ここでは、そう呼んでいますが、地球の方には、魂とか霊と言った方が分かりやすいかもしれませんね。心の中でそう願った時にそれが実現します。早乙女さんがあなたに、ここへ来るように願い、その願いがかなえられたのですね」

「地球人は、わたしたちの子孫ですから」

「我われの先祖?」

「くわしくは、ノルディックの・・」

「聞いたことはありましたが」春利の隣りの女性の意思に春利もうなずいた。

「それが今では地球全体にも広がっていますから」

「でも、日本にはとても少ない」

「あなた方の日本には、この星から私たちの先祖が行った時には、すでに別の種族が住んでいたと聞いています」

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2015/07/24

別な空間

「すでに別の種族が住んでいた・・」春利の脳内にそのフレーズが残った。

「日本には、ずっと以前から人が住んでいたようです」男性からだった。

「リョウジ タニカワは、地球の、あなたがたが日本と呼ぶ所からやって来たのです」先ほどから意思を伝えてくる金色に輝く髪の女性からだった。

「日本から。タニカワ リョウジ・・」春利は記憶をさがすようにつぶやいた。

春利自らかどちらかの誰が望んだのかは分からなかったが、そこで映像が消え空白になった。

微かな人工の風と光を顔に感じ、春利は目を開けた。

「タニカワ リョウジ」という名が頭にはっきりと残っていた。時計の針は夜の11時を回っていた。春利はミナと話したいと思った。電話するには遅すぎた。パソコンからメールを送ろうと思った。気持ちがせいて、何度も入力ミスをして書き直した。疑問は三つあった。

パソコンが唸りだしたのは、夜中の12時前だった。

春利は急いでイヤホンをさしてヘッドフォンを付けた。

「沢さん。メール読みました。いま大丈夫?」

「もちろんです、早乙女さん。電話しようと思ったけど、時間が時間だし・・」

「わたしの方はOKよ。たぶん連絡が来るんじゃないかと思っていたから。クエスチョンは三つね。先ず、私が沢さんを金星に送ろうとしたかってことね。イエスよ」

「何かわけが?」

「わけは、金星へ行ってみて、そこで会ったことにあるわ」

「と言いますと・・」

「ええ、金星の方は、Seele と言ったと思うけど。つまり、貴方と一緒に行った渋江カナさんの願望が、金星へ行きたかったことと、そこにいた男性が沢さんに知らせたいって思いがあったことを、私がキャッチしたってわけ」

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2015/07/27

別な空間

「早乙女さん。その前に。僕が行った世界は、早乙女さんが言う、別な空間ですよね?」

「ええ、そうです」

「それで、その男性って?」

「沢さん、その人、あなたに何らかの思いを伝えなかった?」

「タニカワ リョウジって人のことだろうか」

「そうよ。その名前に憶えはない?」

「うーん。実は、そのことも訊こうと思っていたんだけど。思い出せないんです。早乙女さんには、分かっているんではないかと思うけど・・」

「ええ」

「金色に輝く髪の女性が男性の名を教えてくれたんだけど、これまでに僕がどこかで会ったことがあるんだろうか?」

「ええ。小学生のときだと思うけど」

「それで。顔を見ても分からなかったから」

「小学校低学年で、行方不明というか、そのような子がいなかった?」

「小学校低学年で、いなくなった男の子・・。そういえば、小3の途中から転校して来たので、また転向したのかなって思ったけれど、そういう子がいた。先生もはっきりしたことを言わなかったような気がする。でも、駅前で両親がビラを配っていた。怖かったので、意識的に忘れようとしていたのかもしれないけど・・」

「その人、タニカワ リョウジって人ではなかった?」

「思い出した。谷川、そう、良治。直接話したかどうかは。とにかく、僕のクラスに転校してきて、数か月後のことだったような気がする。来なくなったのは」

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2015/07/31

別な空間

「それにしても、沢さんの記憶に刻まれていたわけね」

「早乙女さんと話すことで名前が思い出せたのは、文集が保管されていて、その後いくどか彼の転校についての文を読んだことがあったから。きっと、何か普通ではないことが起ったのではと子供心に感じていたのだと思う」

「忘れようとしても、かえって意識していたのかもしれないわね」

「確かに。その、彼が、金星に行った。信じられないことだ。金星は熱くて人間は住めないと思っていたけど」

「そうね。沢さんが行った所も地下だから。地上にはとても住むことは出来ないから」

「谷川良治は、僕に、金星にいることを伝えたかった」

「タニカワ リョウジさんは、沢さんに友達というか、心が通じ合える何かを感じていた。しかし、ある日、彼らの乗り物に乗せられて金星に連れて行かれた。この宇宙では、そうしたことがあるわけね。信じられないことだけれど」

「どうして、谷川だけが連れて行かれたのだろう?」

「私が思うには、未来の地球人を準備しているのだと」

「えっ・・未来の地球人?」

「そう、人は地球外からやって来たある種のエイリアンによって造られた。そして、人類が地球に住めなくなる日がやって来る。そのときのために、地球外の星々に地球人を連れて行き、未来の地球人を・・」

「早乙女さん。あなたは、すごいことを考えているんですね。もしかして、その未来図が、早乙女さんには見えている」

「そうね。私に見えるものが、すべて当たっているとしたら・・。」

「いつから、そうしたことが分かるようになったのですか?」

「そうね。あの地震の後、来未さんや春海さんに会った頃から」

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