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2016年04月

2016/04/02

夢のしらせ

「沢さんは帰国してから、会社を辞めてご自分で学習塾を始めたんですね」

「ええ、ここから歩いて行かれる集合住宅で。後で案内します。で、梨花さんは今は?」

「私は自宅でパソコンを使って」

「僕の父も、収入は少ないようですが、アフィリエイトみたいなことをやっているようです」

「じゃあ、私とおんなじですね」

「でも、梨花さんが福島から横浜へ来るのには、けっこう決心がいったんじゃないかなあ」

「両親と来未はもう帰ってこないってことが信じられないけど、現実を受け入れていかなくてはいけないと自分に言い聞かせ、思い切って福島を離れて見ようと思った時、なぜか横浜が浮かんできたんですね。学生のときに友だちとランドマークタワーとか港周辺を見に来て、その後に数回来ていたんですね」

「じゃあ、気にいったところがあったんですね」

「津波を知るまでは、福島も横浜も海でつながっているっていうプラスイメージが強かったから」

「そうなんですね。僕としては、この向こうの僕の家の近くに別の地下鉄駅があって、梨花さんの所まで地下鉄一本でつながっているから」

「偶然ではない、と」

「僕にとっては、最初に不思議なことがあったのは、名古屋にいたときだけど」

「シャンハイに行く前の?」

「ええ。会ったこともない存在が現れて」

「どちらで?」

「借りていたアパートで」

「アパートの部屋に、ETが現れたとか?」

「いえ。年が明けてすぐだった。パソコンでネットサーフィンを始め、いつしかアパートの外は日が陰っていたけど、意識が遠のいていくようになり、ソファに掛けた状態でしばらく眠っていたのか。気がつくと、パソコンの画面に、マリアの像が大きく映し出されていたんです。知らぬ間にどこかをクリックしたのかな、とも思ったんですが、画面のマリアはじっと僕を見つめていたから、そうではないと。深い眼差しだと思いましたね」

「それで」

「マリヤさま、と思わず声に出して言おうとして。すると、二つの目の端から涙がこぼれて頬を伝って落ちて」

「マリアさまの頬を涙が?」

「ええ。その後に起こったことから、後から思うと、知らせに来たんだと」

To Be Continued

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2016/04/13

返信も応答も

年末が近づいていた。

春利は来未の姉・梨花と岸根公園で会ってから、ミナといくどかスカイプとメールでやり取りした。

年末年始休みには上京するから、そのときに梨花さんと3人で横浜で会うことが出来る、と言ってきた。ミナは、すでに梨花が横浜へ来ていて春利と会ったことを知っているのではないかと、春利はその対応で感じた。梨花には同じ横浜市内ということで携帯でその旨を伝えた。

ところが、ミナは休みに入ったはずなのに、突然連絡が取れなくなった。ミナも仕事で忙しいのかもしれないと思ったが、それにしてもメールを読むとか着信履歴から、それまでのミナなら何か一言いってくるはずだった。もしかして、何らかの事故で連絡できなくなっているのかもしれない。

小中学校が休みに入り、春利は午前午後と塾生相手の授業をした。午後の授業後、中学生の補講をやった。方程式の立て方が分からないという生徒のためだった。

補講が終わり、外食のため家を出た春利は、梨花に連絡していないことを思い出した。

「ごめん。なぜだか早乙女さんと連絡が取れなくて。今、塾の仕事を終えて表に出たところだけど・・」

「お二人に比べたら私の方が自由時間があるから大丈夫だけど、早乙女さん、何かあったんでしょうか?」

「ええ。約束を破るような人ではないので、僕もそれを心配しているんです」

「これまで伺ったところですと、一般の人とは違う能力を持ってらっしゃるようだから、何かあったのかもしれませんね」

連絡が取れたらまた電話すると言い、春利はすき家に入った。

直ぐに届いたビーフカレーと野菜サラダを口に運んでいると、ふいに渋江カナのことが浮かんできた。夢か別の空間かは明白ではなかったけれど、あの日信濃境駅から良治が金星へジャンプしたと思われる時空装置のある秘密の館へ導かれ、そこで父さんと出会った。フィンランドへ留学したカナさんは、今頃どうしているんだろう。

コップの水を飲み下した時、もしかしたら、カナさんが僕に何かを伝えようとしているのかもしれない、という思いが春利の中で広がっていった。

To Be Continued

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2016/04/18

返信も応答も Click here !

夜の11時前だった。桑田荘太がネットでアフィリエイトをしていた時、スカイプのサインがパソコンに入った。桑田荘太は、急いでヘッドフォンを取りに隣りの部屋へ行ったが、戻ってきてパソコンにセットした時は切れていた。残念、間に合わなかったか、と呟いた時、今度は固定電話の方が鳴った。

「Hello ! その後、元気? Satoko・・」1年くらい連絡がなかっただろうか。これだと電話料金が大変だから、と、セット出来たからこちらから、と、電話を切り、荘太の方から砂田サト子にスカイプでコールした。

「この時間、今日はお休み?」

「そう。もう年末年始の休みよ。明日から、ロバートとサンフランシスコへ行くから」

「そうなんだ。で、彼は?」

「今日まで仕事で、出ているわ」日本は遅い時間だと承知で連絡してきたのだろう、と桑田は思う。

「あのネコちゃんも元気?」

「ああ、向こうの方にいると思うわ。ちょっと待ってね。今ここへ連れて来るから。アイ!」しばらくしてラグドールを抱いたサト子が戻ってきて画面の映像が揺れ動いたが、桑田のパソコンにはベージュ色の壁だけが映っている。

「そちらには私が映っていると思うけど、カメラ、壁の方を向いたままだよ」

「ああ、そうか。このカメラ動くのよね。アイ、こんなに大きくなったのよ」

「見えた。ほんとうに大きくなったね」むくむくのヘアで被われたメスのラグドールがぼんやりした大きな眼をあらぬ方にやっている。

「桑田さんは良いわね。わたし、年齢的に疲れるようになったから、今度病院に申請して、勤務時間数を減らそうと思っているわ。日本でいう年金のようなものがあるけど、満額もらうにはもう2年勤めないとね」

「いやあ、私は霞を食らっているような生活しているから、サト子さんの方が、ロバートも働いているし、ずっと豊かだと思うよ」

「それで、最近は何しているの?」

「ネットでほんの少しだけ稼いでいるけど、ETのこと調べていて・・」

「エイリアンとかUFOだったら、ロバートも好きでよくビデオ観ているみたいよ。こんど話してみると良いわ」

To Be Continued

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2016/04/30

返信も応答も

「あそう」好きとか嫌いとかではないと桑田は思うが、とにかく相槌を打った。

「サンフランシスコはだいぶ前に行ったことがあるけど、その後だいぶ変わったのかな?」

「私も、西海岸へ行くのは初めてだから分からないけど、桑田さんも来ると良いわね」

「結構、交通費もかかるから。サト子さんのように働いていればね」

「私は、日本に行ったら働き場所もないし、私には日本は合っていないのね。上の人は威張っているし、人目を気にしながらやるのは」

「サト子さんは看護師の資格も持っているし、日本に戻っても働き場所はあると思うよ」

「私、こちらに来て今の病院で看護師してたけど、ここでは、日本と違って自己主張が強くないとやっていかれないので、検査の方に回してもらったのね。意見をはっきり言えなくて、ずいぶん苦労したから」

「そうなんだ」

「患者さんは何かあると直ぐスーするし。スタッフも最近は、ヒスパニックの人や黒人の人も増えて来て、以前は白人の人が多かったけど、あの人たち、廊下であっても挨拶もしないし、アメリカがしてくれることだけを考えているのね」

「スーって? 」

「えーと、訴えるのよ」

「訴訟を起こすの?」

「そうよ。だから、意見をはっきり言えないと、弱いところに回ってきちゃうから」

「でも、すぐに検査に変えてくれたの?」

「上司に相談したら、OKしてくれて。検査だと患者さんと直接ぶつかることもないから。もういなくなったけど、私がこちらに来てからずっと一緒に働いていたけど、良い人だったわ」

「日本だと、看護師から検査のスタッフになるのには資格というか、簡単にはいかないと思うけど、柔軟なんだね。・・ごめん、サト子さん、こちらはもう真夜中だから・・」

To Be Continued

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