eye

2016年06月

2016/06/03

返信も応答も (マリアとミナが上空に)

n2 (1)

「あの橋を渡って・・」
春利は二人が歩いている広い芝生の外れを指さした。園内から丸い池につながっている溝のような川に小さな橋が掛かっているが、側のベンチにはふさふさヘアのゴールデン・レトリバーを連れた中年の女性が休んでいる。

「ほんとうだ。向こうにはずいぶん細長い池があるわね」

「ここからは見えないけれど、あの長池の土手の向こうに鶴見川が流れていて、この広い公園は多目的遊水地になっているんだね」

「向こうにはずいぶん大きな橋があるから」梨花は右手の空間に浮かび上がって見える橋を眼で追った。行き着く先には巨大なスタジアムがそびえている。

橋を渡り、二人は芝生と長池の間にある舗装された幅の広い周回路に出た。芝生側には等間隔でベンチが並んでいる。

「この辺り?」梨花が小声で言う。春利は無言で先を指さす。

春利は先を歩き、以前座って見上げたベンチの側まで行って梨花を見た。背もたれのないベンチに二人は並んで座った。どちらともなく上空に眼がいった。ところどころに雲があり、その位置からはもはや太陽は見えなかった。

「少し暗くなったわね」芝生の方を向いて座っている二人の後ろをトレーニング姿の男子が5、6人走って行った。

「早乙女さんは、ほんとうにどうしたんだろうね」

「やっぱり、あの惑星に行ったのかしら?」

「僕には超能力とかはないから、ほんとうのことは・・」梨花は足元の芝生に視線を落とし、春利は、芝生の立木の辺りからその向こうの金網で囲まれているサッカー場の方を眺めていた。

と、二人は同時に上空を見上げた。いつの間にか、上空に大きな雲の固まりが横たわっていた。

「いま、何か聞こえなかった?」

「ええ、私にも聞こえたわ」

「あれは、早乙女さんの声」

「私の名前も言ったわ」

「沢さんと梨花さん・・」

To Be Continued

Sponsored Links
2016/06/08

空からのメッセージ

aji.jpg

「確かにそう言った」

「あれは、早乙女さんの声?」

「間違いない」

「私たち、同時に見上げたわね」

「そう。僕ら二人にサインを送ったに違いない」春利が上空を見上げながら大きく手を振った。続いて梨花もそうした。

「サオトメミナデス。レンラクデキナクテゴメンナサイ」その時、二人は明確に確認できた。雲で覆われている一部分が明るくなったが、乗り物の姿は確認できなかった。

「早乙女さんは、きっと何か事情があったに違いない」

「そうね。でもこうして連絡してきてくれた」

「あの光の向こうに空飛ぶ乗り物があって、そこからメッセージを送ってきているに違いない」

「私のことも、分かっているのね」

「イマワコレイジョウレンラクデキナクテゴメンナサイ」

「早乙女さん!ありがとう。一緒にいる方によろしくです!」

「梨花からもよろしくおつたえください」

「ハイ。デワマタ」

その言葉を最後に上空の明るい部分が雲で覆われた。二人は芝生のある地面に眼を戻した。

「わたし、ちょっとめまいがするわ」

「ぼくも。なにか急に辺りが暗く見えない?」

「ええ。雲間からの光のせいかしら」

「雲に覆われていたけど、あの部分は思ったより明るかったのかもしれないね」

「ええ。でも、どんな形の乗り物かは分からなかったわ」

「そうだね。この公園にはまだ人がいるから、姿をあらわすことはしなかったのだと思う。早乙女さんの側にいたのはあの方だったのかな」

To Be Continued

Sponsored Links
2016/06/22

空からのメッセージ

m.jpg

「あの方って、マリアさま?」

「梨花さんには想像もつかないかな」

「どういう意味で?」

「マリアさまが、数千年以上生きていて、実在しているってこと」

「人間の常識から言ったら、それが普通じゃない?」

「僕は、マリアとイエスの関係は親子関係では・・」

「私も詳しくはないけど、処女降誕って、信じがたいから」

「実際は僕にも分からないけど、新約聖書の部分は宗教として書かれたもので、別々の神と呼ばれたETだったのではないかということ。そして、現実の神と呼ばれた二人のETは、人間のような形で誕生したのではないのではないかと」

「どういうこと?」

「リサーチャーが言っているように、かれらは、人間のような生殖行動によるのではなく」

「遺伝子操作?」

「実際彼らから聞いたわけでもないし、質問もできないけれど、人間のような親子関係とは違うんではないかと」

「ええ、私もそんな風に思えるわ」

「分からないことばかりだ」

「私だってそうだわ」

「神と呼ばれる彼らのことでなくても、突然の地震と津波で来未が行方不明になったことや、早乙女さんが僕の前に現れたこと、それに、あの方の乗り物で、縄文時代と現在を行き来したことなど、みんな夢のような現実で・・」

「そうだわね。私だって、どうして両親や妹の来未が突然いなくなってしまったのかと」春利は梨花の目から大粒の涙が落ちるのを見て、座っていられなくて立ち上がった。

To Be Continued

Sponsored Links
2016/06/29

空からのメッセージ

sp1.jpg

梨花も立ち上がり、二人は舗装された周回路を歩き始めた。陽は沈み辺りは暗くなっていたが、さほど寒くはなかった。

「梨花さんはほんとうに大変な経験をしたんですね。家族を一度に失うってことはつらいことですよね。僕の場合は、母を亡くしたけれど、父と再会できた。来未は戻って来ないけど」

「わたし、人はいつどうなるのか、ほんとうに分からなくなったわ。これが幼いときだったら生き延びられるか。実際そうした目に遭った人もいたんだから」

「そうですね。僕の父も、小学校の低学年で母親に病死されて、そのことが神の世界にふれるきっかけになったと思うけど、今度は、その神がETだったという現実にぶつかって」

「ほんとうに、その世界って謎ですね。人には見えない世界でもあるし」

「確かに。この空間に別の空間が重なっていると聞いても、我われには見えないし」

「その世界が、早乙女さんには見えるんでしょうか?」

「くわしいことは分からないけれど、遠くの世界やあるものは見えるのかもしれない」

「さきほども、早乙女さんは上空から私たちを見ていたんですよね」

「雲でおおわれていたけれど、この同じ空間の空だと僕は思うけれど」

「別の空間だったとしても見えるの?」

「それは、今度会った時に訊いてみないと分からない。僕には」

「あっ、もう星が出ているわ」

「ほんとうだ。金星かな」二人は南西の空低く輝いている星に眼をやりながら周回路を進んでいた。頭にライトを点けた人が向こうから走ってくる。

To Be Continued

Sponsored Links
2016/06/30

空からのメッセージ

ffc.jpg

「この公園はいつもこんな風?」

「それはどういう意味?」

「年末の人の出というか、普段と比べて」

「日曜とか祭日は家族連れとか学生が多いけど、年末にはあまり来たことないけど、何かの大会とかあるとすごい人出だけど」

「この公園内の施設を使って?」

「そう。陸上とか野球やサッカー、それに、そこに並んでいるテニスコートも」

「もう暗くなったのにテニスコートにはけっこう人がいるわね」

「そうだね。先ほど通って来たあのスケボー広場なんかだいぶ遅くまでやっている人がいるよ」

「女の子もいるの?」

「広場は二つあるけど、向こう側の小さい方で女の子がやっているよ。手前はけっこう上級者というか、高いコンクリートに乗り上げたり、ジャンプしてスケボーを回転させたり。僕なんかにはとても真似は出来ないね」

「でも、何かとても不思議な気がするわ」

「どういうことが?」

「すごくたくさんの人が日常的なスポーツをやっているのに、上空にはふだん考えもしない事が起こっていて」

「確かに。同じ時を過ごしているのに、見ていたり感じている世界がまるで違っている。神の存在については信じる信じないにかかわらず受け流しているかもしれないけれど、UFOとかETについては、存在すら認めていない人もいるんではないだろうか」

「わたし、この空間に別の空間が重なっていると聞くと、見えている世界が嘘のような妙な気持ちに」

「僕もそうした気持ちになることが多かったけど、最近はそれが現実なんだと自らに言い聞かせているから」

「私は、神と呼ばれる存在にも、ETのどんな種にもこれまで遭ったことがないから」

「でも、それと認識しないだけで、実際は・・」

「また分からなくなった。それはどういうこと?」

To Be Continued

Sponsored Links