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2017年02月

2017/02/06

ミナの行方

地球時間でどれくらいたっただろうとミナが腕時計に目を走らせると、午後6時過ぎで止まっていた。

と、隣りの操縦席に座っている者からメッセージが伝わって来た。

「まもなくアナタはマザーシップに移動する。そのままの状態で座っていれば、席の方が移動するからアナタは何もすることはない」

「マザーシップはもう側に来ているんですか?」

「アナタたち、地球人の言い方をすれば、この乗り物のすぐ上に来ている。たぶんアナタは以前に乗ったことがあるだろう」

「あのプアビさんが乗っていた巨大な乗り物ですか?」

「そうだ。今回もプアビの指示で我われは来ている」

「それでは、あなたたちは、いつもはどこにいるのですか?」

「それは、これから向かう我われの星だ。あなたは以前我われの星の、地球人が言う上空に行っているはずだ」

「上空から見ただけではよく分からなかったけど」

「今度は、星に降りるからよく分かるだろう。さあ、準備が出来た。あなたはこのマシンから母船へ自動で移動する」向こう側に座っている者の手が上を指した。

天井部分らしい。ミナの席が後ろへ移動し、乗り物の中央まで行って止まったかと思うと、来た時は自ら締めたベルトが自動的に外れた。

いつの間にか天井部分が丸く開いた。ミナの身体が浮き上がって行った。

「それではまた」と、操縦席の二人の意思が伝わって来た時、ミナは天井の丸い穴からマザーシップへ運ばれていた。

「ミナさんようこそ」

ミナが気づくと、すぐ側に以前会ったことがある長身のETがいた。宇宙服のようなものに覆われていたが、大きな眼を見てそれがプアビという以前会った女性であることはすぐ分かった。

To Be Continued
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2017/02/17

ミナの行方

「彼らの乗り物に乗っているときの時間の経過について、私には科学的な解説は出来ないけれど、賀茂川の岸辺に降ろされ、家に帰りついた時、家の時計は8月20日朝の5時前だったわ」

春利がミナから連絡を受け、新横浜駅で待合せたのは9月の最初の日曜日だった。二人は新横浜公園まで歩き、そこでゆっくり話そうということになった。

「8月12日の夕方に賀茂川の岸辺に行き、そこで彼らの乗り物に乗り、途中でプアビさんがいる巨大なマザーシップに乗り換えて、名前は分からない惑星Xへ行ったというのですね」

「ええ。惑星Xに降りる前に、プアビさんの指示に従って、宇宙服を身に付けたわ。彼らはあの星では宇宙服を着ないで生活できるのね」

「どこで、どこで生活しているんです?」春利は自らの声が大きかったのかもしれないと、2人が並んでかけているベンチの周辺に目をやった。日曜日の午後2時近いその時間、背後の舗装された周回路を半袖にショートパンツ姿の若者が5、6人額に汗を浮かべて駆けて行った。

「地球上と同じように、地上にも地下にも住んでいるみたい。私が案内されたのは、地球で言うと近代的な寺院のような地上の建造物で、地球のどこかにいるような、不思議な気持ちになったわ」

「ミナさんは宇宙服を着て、プアビさんや彼らはどんな姿で?」

「地球でいう、パワースーツみたいな感じだったわ」

「プアビさんも?」

「ええ。プアビさんは長身で眼が大きく、頭は何か被り物で被われていたわ。受信装置みたいなものが入っているのか分からないけど」

「じゃあ、その星の皆は、姿かたちは人間に近い・・」

「そうね。ただ、人よりはずっと進んでいるテクノロジーというか知性というか、だいぶ差があるってことは分かるわね」

「それは、ある意味こわいですね」

「ええ。人間は、想像もつかないくらい遠い昔に、彼らの訪問を受け、彼らから多くのことを学んでいた。複数の種が地球を訪問していたけれど、いつのまにかそのことが忘れられてきた。そして、作り話の世界のようになっていった」

「でも、それはすべて本当のこと」

「ええ。プアビさんは、そのことは地球の壁画や絵画やレリーフやテラコッタの中に今でもしっかりと残されている、と」

「そういうことなんですね。僕らは、その事実を忘れ、信じようともしなくなっている」

「ただ、きれいごとでない現実があった。おそろしい殺戮も繰り返されたとプアビさんは教えてくれた」

「神と言われたET同士、あるいはETと人間の間で、ということ?」

「ええ、双方で」

To Be Continued

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2017/02/26

ミナの行方

「現在こうして暮らしている僕らは、学校でも家でも、そうしたことを聞いたことがなかった」

「そうね。だから、ETと人間の橋渡しをしてと言われても、人間の側があまりにも知らないし、一つの種に限っても」

「プアビさんたちのような一つの種に限っても、一般人にどう説明したらいいかも分からないですよね」

「ええ。プアビさんは、自分たちの種を中心に考えていると思うけど」

「あの、マリア様の種も近いところにはあると思うけど、実際はどうなのか、僕にはさっぱり分からない」

「この日本列島に最初に降り立ったのは誰かもまだはっきりしないわね」

「ミナさんに分からないのでは、僕にはそれ以上分からない」

「でも、意外とそうでもなかったりして」

「それはどういうこと?」

「私には、確かにリモートビューイングがあるかもしれないけど、ある領域から向こうはまったく見えなかったりするから」

「ある領域って?」

「別な空間とか、時間の感受というか・・」

「それらのある部分で、とつぜん見えなくなるというか、判断が出来なくなる、ということですか?」

「ええ。その面、沢さんの方が見えているかもしれないって思うことがあるわ」

「でも、僕には見えないことだらけですよ。ただ、日本列島には、土偶とか土器とか、当時の人が想像でつくったにしてはおかしい。見たものをそれに近い形で再現したと考える方が納得できるものが発掘されている。たとえば、エジプト・ギザ高原で見つかったアヌ王のマスクとか言われるものより精緻ともいえるものや縄文の女神とか仮面の女神と言われる土偶が八ヶ岳山麓周辺で発掘されていることを考えると、少なくとも縄文時代には居たと考えるのが自然だと思われる」

To Be Continued
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2017/02/28

テレパシー

ミナが上空へ顔を向けた時、春利はふいに時間が気になって腕時計に目をやったが、後ろでバタバタと走る足音がした。
振り返ると、柴犬のリードを持った高校生ぐらいの女性が引っ張られる格好で駆けて行く。

「あした行くよ!」

「えっ?」春利は思わずミナの方に顔を向けた。

「ミナさん、いま何か言った?」

「いえ。何も」ミナは上空から視線を春利の方へ向けた。

「でも、あの声は確かにミナさんの声だと思ったけど」

「私の声で、何と言ったの?」

「あした行くよ」

「確かに私の声だったのね」

「ええ。その声だった」

「もしかして」

「もしかして? 何か心当たりが」

「それ、どこから聞こえた?」

「うーん。そう言われると分からなくなるけど」

「テレパシーじゃないかしら」

「テレパシー? だれから・・」

「くわしいことは分からないけど。その声が私には聞こえなかったということは、沢さんの頭の中に伝えてきたんだと思うわ」

「早乙女さんの声で、僕の脳内に伝えて来たということは、僕とミナさんのことを知っている存在」

「そうね。『あした行くよ』って言ってきたんなら、また伝えてくると思うわ」

二人は同時に上空へ目をやった。

To Be Continued

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