現在・過去・未来

「みなさんに伝えたいことがあって、こちらへ案内した」
春利が見覚えのある人の姿を見つめていた時、突然脳内にメッセージが伝わってきた。宇宙服を着た存在とは違い、どこか人間に似た感じがした。
「わたしは、方針を転換した」
「どういうこと?」
連れてこられた5人のうちの4人が発した問いだった。
「これまでわたしは、われわれと人間たちとの橋渡しをあなたたちに望んでいたが、それは必要ないと、人間を見ていて思った」
「橋渡しは必要ない」
春利とミナがそれを同時に反芻した。
「そうではなく、これから変化していく人間のことを、人間の手で伝え、未来に残していくために、わたしはあなたたちをここへ招いた」
「それだったら、もっと適した地球人がいっぱいいるのでは・・」
そう思いながら、春利は見覚えのある男と眼を合わせた。その時、相手が同級生の谷川良治だと確信した。
直後に春利は、先ほどまでいた宇宙服を着た存在が消えていることに改めて気づいた。
「地球上には、ほかにもこのことを伝えている人間がいる。あなたがたの国では、ここにいる5人を選んだ」
この意思を伝えてきている存在に、僕はこれまでに会っているだろうか。・・
「私たちは、これから変化していく未来のことを、ほかの日本人に伝えるために選ばれた」
春利はミナの隣に座っている若い女性の思いが伝わってきたことに驚いた。
ミナが彼女と目線を合わせ、今度は春利の方へ目くばせした。
「そのとおり」
全員に見えない相手の意思が伝わった。
5人からは見えないが、意思を伝えてきている存在からは、見えているに違いない、と春利は思った。
若い女性が、年配の学者風の男と合図している様子を見て、春利はミナ以外の3人が誰なのかを認識した。
To Be Continued