eye

2014/03/08

新横浜駅で降りると、桑田は日産スタジアムの方へ向かって歩き出した。立ち止ると寒いので意識して早足で歩いた。円形のスタジアムが前方に見える。

携帯電話は持って出たが、インターネットに接続する契約はしていなかった。乱視の上に視力が落ち、小さな画面を見て文字入力するのは億劫だったから、携帯のメールアドレスを誰かに教えることはまれだった。フェイスブックで送った相手が、間違いなく春利だったら、携帯の電話番号とメールアドレスを教えたかったが、違う場合も考えられたので、パソコンの方に本人から届いたら送ろうと思った。何かあった時と思い一応バッグに入れてきたが、いつか携帯で春利と話したいと思った。

烏山川の側の公園に着いた。歩道の右端に手すりが続き、土手が斜めに下って川があり、左手には桜や常緑樹がまばらに生えていた。そこへ行くといつもそうであるように犬連れの人に出会った。若い人が多いのは、日曜だからかもしれない。桑田は等間隔で並んでいるベンチの一つに腰を下ろした。垂れ下がっている桜の小枝の先に、小さな蕾がいっぱい付いている。以前来た時に見かけた猫たちの姿が見えない。寒いからか、餌やりの人が来る時間ではないからか。

しばらくすると、辺りがパッと明るくなった。雲が大きく移動したのだろう。すると、スタジアムへと向かう広い西ゲート橋の上を一匹の白い子猫が早足で歩いているのが見えた。桑田はすっと立ち上がり、そちらへ向かって急いだ。見かけない子猫だった。飼い猫が来る場所ではなかった。誰かが最近捨てていったのだろうか。

桑田が橋を見渡せる所まで行った時、真っ白な子猫は、並んで立っている太いポールの一つの陰に隠れた。追いかけようと思ったが、子猫はポールの間に置かれている直方体の植木鉢の陰へ走り去った。桑田は追いかけるのを止めた。陽射しが暖かさを運んできた。

橋下のフットボールパークでは、子供たちがサッカーの練習をしていた。円柱形の太いガードパイプは陸橋の終点まで伸びている。金属製のそれは冷たいだろうと、手を掛けることはためらったが、広大な新横浜公園の向こうに西空が開けていた。

と、その時桑田は空の一点で光る物体を見た。乱視で視力が落ちていたが、太陽光線を反射して飛ぶ飛行機でもヘリコプターでもなかった。単なる球形ではなかった。光る球体の横に細長い柄のような何かが付いていた。昼前のその時間、人工衛星でもないだろうと思った。

次の瞬間、光る物体は見えなくなった。見えたのは、5、6秒だっただろうか。下方に雲が垂れ込めていたが、そちらへ行ったのか、しばらく見つづけたが、もう現れなかった。

To Be Continued

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