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2014/07/03

久ノ浜にて

車内に久ノ浜駅到着のアナウンスが流れた。木造の駅舎が見える。時計の針は11時を回っていた。

ホームに降りた乗客は十数人だった。
初めての場所なのに、春利は以前来たことがあるような懐かしさを感じた。

ミナは来ているだろうか。約束の時間は、11時から11時半の間だった。

改札を通り駅舎の待合室に目をやった。自動販売機の前で椅子に座っているのは間違いなくミナだった。一月半前に上海で会ったミナがそこにいた。ミナの視線が春利と合った。二人はほとんど同時に口元に笑みを浮かべた。

久ノ浜駅を背にして、並んで歩き出した。国道6号線を渡り、県道157号線を海岸の方へと歩く。春利はホテルのネットで地図を確認し、簡単な図を描いてきた。震災前の状態は見てないので、比較が出来ない。来未の姉の梨花に連絡すれば、日曜日でもあるし来てくれたかもしれない。ミナには、来未に姉が一人いることだけを伝えただけだった。

数分歩くと海が見えた。久之浜は地震で家が崩壊したのではなく、津波と火災で壊滅的な被害を受けたと春利はネットで読んだ。福島原発の影響で屋内退避の指定があったということを思い出す。

「この辺りは、海がすぐなのね。来未さんや春海さんはどの辺にいたんでしょうか」

「ほんとうのところ、僕にも分かりません。会社の友達宛に久ノ浜に行くというメールがあったことを聞いたのですが、地震があった時間どこにいたのか。ただ、駅の名前と両親が住んでいたおよその場所は、神社が近くにあったこと。それも、この先の橋を渡った向こうにも神社があるけど、そこまでは行かない、前の神社だと・・」
春利は前日ホテルのネットで見た地図をざっと描いてきたメモを見せて言った。

「沢さん、そのことは誰に?」

「すみません。早乙女さんにはくわしくはふれなかったけど、来未の姉・梨花さんです。梨花さんとは、震災後一度東京で会ったことがありますが、その後、来未は行方不明のままですし、両親も、家ごと津波で持っていかれ行方不明のままですから。いわき市にいるはずの梨花さんにも、今日のことは知らせてありません」

「そうだったんですか」

To Be Continued

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