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2014/07/11

リアルの出会い

稲荷神社を後にした二人は急いで久ノ浜駅へ向かった。乗り遅れたらいわき駅までタクシーを飛ばすことになる。息が切れそうで汗をかいたが、間に合った。

春利とミナは東京駅で別れた。ミナはJR新幹線のぞみで京都へ向かい、春利は新宿へ出て小田急線に乗り換えた。

父・桑田荘太とは、新宿で連絡が取れた。携帯を持って駅に迎えに出るという。

春利が実際に父・桑田荘太に会うのは25年ぶりということになるが、メールの添付ファイルで互いの最近の写真を見た後に、スカイプで相手の映像を見ながらいくども話した。

小中高校と事あるごとに父のことに思いを馳せることがあった。父は死亡したのではない、母と合わないことがあって出て行ったのだろう。どこかで暮らしているのだろう。しかし春利はそのわけを母に直接訊いたことはなかった。訊けない雰囲気が母にはあった。いや、勝手に春利がそう思い込んでいたのかもしれない。いずれにせよ、母は看護師として病院で働き、女手一つで春利を大学まで出してくれた。金銭的なことで困ると母に言われたことがなかった。

車内のアナウンスが春利の降りる駅の名を告げている。春利が父に会いたいという思いが強くなったのは、大学の電気工学部を卒業して就職が決まった時だった。その後母が病死して、父を見つけ出そうと心の底で思い始めた。その父も春利をさがしていたことを、上海の公寓の部屋でメールで知った。

電車が停まった。

僕は父を憎んではいなかった。春利は心で呟いてホームに降りた。

To Be Continued

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