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2014/07/20

リアルの出会い

「どんな状況であれ、愛する人が亡くなるってとてもつらいことだね。私も、5歳のとき母親が脳出血で倒れてね。あの頃は医学が進んでいなかったから、母はそのまま植物状態で臥したきり何も話せなくなってしまった。小学校に上がり、学校から戻っても言葉で表現できないほどさびしかったね。私も栄養失調だったし。今から思うと、農作業から来る過労だね。戦後、我が家はほんとうに貧しかったから。母は父と一緒に田畑の仕事や養蚕をしながらの子育てでね。臥した状態は私が小学校3年の秋までつづき、とうとう亡くなってしまった。幼かったから、悲しさやさびしさというものを口に出して表現できなかった」

「父さんは、そんな経験をしていたんだ」

寺の表示がある交差点を右折し、二人は次に並木橋とある交差点を右に行った。

15分ほど歩いて父の住む団地に着いた。階段を上がり桑田がキーを取り出してドアを開けた。その間、近所の住人には会わなかった。

「この辺は地震の影響はなかったよね」

「揺れたけど、東北地方のようなことはなかった」

「日本で、あの日に大地震が起きて、巨大津波があったなんて。それに原発が追い打ちをかけて。中国でも上海は、プレート境界から離れていて、地震も起きない地点になっているみたい。よくわからないけど」

春利は父に促され、ソファに掛けバッグを脇に置いた。何か夕食を頼もうといくつか父がメニューを持って来た。春利はピザがいいと言った。一応チェックしてみると桑田がパソコンを開いた。春利がピザの画像を指さした。しばらくして、パソコンで注文入れるより電話の方が早いかもしれないと、桑田が立ち上がって受話器を手にした。

「父さんに会いたかったよ」注文が終わった時、父の背中へ向けて言った。

「私もさ。お前のことがずっと気がかりだった。母さんが亡くなったこと、お前が名古屋に行ったくらいまでは、あのころ上の階に住んでいて親しかった旦那から連絡をもらっていたから」

「そうだったんだ」

To Be Continued

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