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2014/08/10

上海へ

春利は帰りの航空券を取っていなかった。今までそうしたことはしたことがなかったが、ネットで24時間オンライン予約がある。平日の15時までなら出発日前日で予約が取れるかチェックできる。このシーズンだと一人だけなら、航空会社や飛行場を選ばなければ何とかなる。それに、自らの運試しのつもりもあった。

木曜の夜、スマホからではなく父と話しながら、父のパソコンでチェックした。翌日、成田からの便の予約が取れた。航空券の受け取りは空港でOKだ。

金曜の朝、父のつくってくれた朝食を一緒にすませ、春利は父と一緒に団地の部屋を出た。場合によっては叔母の家によっても良いと思ったが、今回はこれで良いと思った。名古屋の会社に立ち寄るつもりはなかったが、一緒に久ノ浜の海辺を歩き、来未や多くの亡くなったり行方不明になったままの御霊に手を合わせたミナ。そのミナのいる京都に立ち寄っても良いと思ったが、またの機会にすることにした。

翌日が土曜のせいだろうか、成田発の上海行きはほぼ満席だった。春利は席に座るとほっとした。自分は一人ではないという思いに満たされていた。

電車が来たホームで父に手を振った時、涙があふれそうになった。父も目に手を持っていった。自らの内に父と同じものが流れているのを感じた。父は、この社会で稼いで生きて行くのには不器用かもしれないが、心の底では母を裏切ってはいなかった。母にしてみれば、稼ぎもないのに口先だけは人並みかそれ以上だったことが、腹立たしく許せなかったのかもしれない。

隣りの席の女性が席を立った時までは記憶していたが、次の瞬間には春利の意識が遠のいていった。傍から見れば安堵の表情だった。

To Be Continued

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