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2014/10/27

世界の向こう

帰国して新居となる横浜の団地に着いた春利は、国内のスマホを購入してすぐに部屋で使うインターネットの手配をした。上海から送った布団が届くまで夜は父の所に寝泊まりを依頼して、朝になると名古屋支店に挨拶に行った。

「8年間お世話になりました」春利は深々と頭を下げた。

「沢君が辞めるのは、正直言ってとても残念だよ。部長は急用で出かけているが、君にはもっと上海でやってもらいたかったと言っていたよ」安藤課長は真顔で言った。

「先輩、マジで辞めちゃうんですね。もっといてほしかったですよ」
帰りの新幹線の車内で、さびしそうに言った佐野の顔が思い出された。自分でも、こんな風になるなんて予測がつかなかったが、前を向いて生きて行くんだ、と春利は自らに言い聞かせた。

帰国して8日目に上海から送った荷物が届いた。父がこれで良かったらと使ってない食器類をくれた。

駅で新聞を買い、舎内に置かれていた無料のアルバイトニュースもバッグに入れて持ち帰った。スマホで検索していたが、直接ハローワークへ行ってみようとも思った。いずれにしても会社勤めはやりたくなかった。家で、団地の子供たちを募集してちょっとした学習塾とか家庭教師をやっても良いと思った。大学生のときに経験したが、小中学生に教えることがきらいではなかった。時期的に塾講師の募集も検索画面にヒットした。

団地には光回線も来ているというから、電話が引かれたら自分に出来そうなネットビジネスの準備も始めようと思う。VDSL方式で途中から室内の電話線に変換になるが、上海の公寓よりも速度は速いかもしれない。

そうした準備に追われていた時、スマホにメールが入った。ミナからだった。春休みに入るから、時間が取れたらどこかで話さないかと言ってきた。武蔵野の生家にも帰省するつもりかもしれない。

To Be Continued

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