eye

2015/03/09

世界の向こう-もう一人の自分-

春利が下車した駅は新横浜だった。ミナと会った駅ビルのフロアへとエスカレータが上がっていくのがすぐ側に見える。陸橋から階段へと人の流れに合わせて春利も駅から遠ざかりながら移動して行く。

連休だから人出が多いのだろうか。エレベータはいつ出来たんだろうかと、左手で待っている年配者の人だまりを見て思う。

階段を下りていくと、この方向に歩くのは何年振りだろうかと懐かしさがわいてくる。幼いころの微かな記憶が途中で途切れる。

国際競技場はスタジアムと名前を変えているが、同じ位置に巨大な姿を現している。スタジアムでなく、下の方に見える広い公園に行ってみようと思う。

「地球が二つある」というミナからのメールのことがふいに思い出される。

葉桜の道から、川を横切る綺麗に舗装された広い通りを歩く。鯉が泳いでいるのが見える。通りの中央に、等間隔の高いポールが建っている。通りの突き当りには円形の巨大なスタジアムの外壁が見える。

「地球が二つあれば、月も二つあるかもしれないし、もう一人の自分がいるかもしれない」という思いが春利の脳裏に浮かぶ。

太陽をはさんで点対象の位置にもう一つの地球があるという思いに取りつかれたというミナの教え子。カナというその子は理工学部に籍を置く学生だという。

スタジアムの周りをぐるりと巡り、広いコンクリートの通りは続く。近いようで意外と向こうなんだ。前方からリードを手にちょこちょことやって来る女性がいる。白地に黒い部分が目立ち、絹のように細い被毛が揺れている。小さな体にしては大きな黒い目。春利の方を見ている。

「もし、その地球にもう一人の僕がいたら、その人が何らかの原因で亡くなれば、僕はどうなるのだろう」

すれ違ったChin(狆)がふり返ってこちらを見た時、春利は背筋に冷たい旋律が走るのを感じた。

To Be Continued

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