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2012/02/07

クリスマス

電話のコール音とも違う小刻みに震えるような音だった。ノートパソコンは立ち上げたままになっていた。

桑田はスカイプを設定したことを思い出し、挿しこみ口を確認した。USBヘッドセットはすぐそばの小さなテーブルにあった。

「あっ、桑田さん。サト子。クリスマスおめでとう」

サト子の鼻から下が桑田のパソコン画面に映し出され、桑田自身の顔が画面の右下に小さく出ていた。

「ああ、クリスマスおめでとう。メールでスカイプの設定したことを送っておいたけど読んだんだ」

「そうよ。桑田さん、桑田さんのお父さんのようね」

「だって、もう60過ぎてるんだよ。あなたの方、カメラをもう少し上向きにして」
桑田は画像を観ながら数回上げ下げを指示した。サト子の記憶の中に生きている桑田は、神学部の学生の頃のものが強いのだろう。

「サト子さんあなただって、気持ちは若いかもしれないけど、すっかりおばあさんだよ」

「気持ちはね。今、ロバートは家族に会いに行っていていないから」

桑田はパソコンの画面に表示されているデジタル時計の数字を見た。こちらは午前10時半。フロリダは、夜の8時半だった。前の彼と別れ、ロバートとは10年くらい同居していると聞いたが、ロバートはクリスマスだから家族に会いに行ったのか。互いに、個人の自由を認め合い深くは干渉しないと言っていたが。

桑田荘太は、アメリカという国について考えた。ロバートには子供は4人いると聞いたが、子供たちが独立したり成人してから、妻と別れサト子の持家に来て同居している彼のことが分からなかった。75%が再婚をするからそれが普通だと聞いても、荘太にはピンとこなかった。最初に結婚した相手と一生連れ添う夫婦の方が少ないのか。

「先ほど食事を終えて片づけも済んだから大丈夫だよ」話しを続けて良いかとサト子は訊いてきた。

「桑田さんは自分で食事を作るのね。私なんかちょこちょこ食べるだけで、ちゃんとしたものは作らないわ」

「だって、もう20年以上一人でやっているんだよ」

「奥さんはどうしているの?」


To Be Continued

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