eye

2015/08/31

混合種

春利は横浜西口、ザ・ダイヤモンド地下街へとつながる階段横に位置する石像の側に立っていた。石像の名が、『魁の舞』というのだとネットで調べて初めて知った。

8月に入ったが、ミナは採点で忙しいだろうと春利は連絡を控え、夏季講習に専念していた。春利の小中学生の頃は3学期制だったが、その後2学期制になった事は上海から戻って認識した。春休み、夏休みと冬休みは同様にあるのでほっとした。

ミナから電話が入ったのは8月半ばだった。採点も終わり一段落ついたから横浜へ行くという。以前立ち寄ったとき同様、新幹線で途中下車し、その足で生家の武蔵野の両親のところへ行くのかと思ったが、ミナの大学は夏休みが9月半ば過ぎまであるので春利の都合はどうかと訊いてきた。塾の夏季講習が終わり、生徒の授業が始まるまで月末月初と数日間あるからと応えると、両親のところへ先に行き、それに合わせて行くという。

人通りは多いが、石像の側に立っているのはなぜか春利だけだった。この像、目立たない上に嫌われているのだろうかとふと思う。像は目立たないが、地下街へとつながる階段横の石像といったらここしかないから、と思い、そんなことを考えていた自分がおかしく思えた。だって、彼女にはリモートビューイングの能力があるじゃないか、携帯で連絡取り合わなくても、もしかしたら、何の連絡もしなくても、僕がどこにいるか、あの人には分かるんじゃないか、という思いがわき起こって来て内心で苦笑した。

それにしても、いつから僕の周りに不思議なことが起こり始めたのか。あの地震で来未がいなくなってから。否、名古屋に就職して、あのアパートに住み始めてからか。

「ああ、長いこと待ちました?」人の流れから抜け出し、春利の方へ向かってくる女性の顔から笑顔がこぼれていた。

「いえ。先ほど来たばかりですよ。この場所、すぐ分かりました?」

「ええ、多分こちらの方じゃないかと」

「早乙女さんは道に迷うことなんかないのでは・・」

「そうでもないですよ。でも、心を落ち着ければ見えてくるから。でも、沢さんだってそうじゃないかなあ」

「大きく迷ったことはないけれど、早乙女さんのような能力は僕には備わっていないから」

「分からないですよ。沢さんにもあると思うわ」春利はちょっとおどけた顔をして見せ、喫茶店がある方向を指さした。

「カナさんとは連絡が取れました?」

「ええ。カナさんとタニカワリョウジさんは従兄妹だったわ」

「えっ、イトコだって?」

To Be Continued

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