eye

2015/10/29

夢と別な空間

春利は広い芝生の中央に立っている自分に気づいた。辺りは薄暗く人の気配はなかった。

どれくらいの間そうしていたか分からなかったが、いくども周囲を見回しているうちに、次第に記憶が戻って来た。振り返ると20メートルほど行った所にベンチが並んでいた。ふーっと息を吐き出しベンチへ向かった。朝でないことは光線の具合で分かった。腕時計を見ると、アナログ時計の針は、5時を回ったところで止まっていた。

「いつもの公園。僕はここからあの乗り物で・・」

広大な芝生を巡っている周回路を数人の若者が駆けていった。その姿を暗闇の中で追っていると懐かしい気持ちが湧いてきた。

僕は、あの方と一緒に縄文時代の上空を飛んでいたのだろうか。案内する、というあの方の意思が伝わって来た。・・そして、僕は上空にいた。湖があった。八ヶ岳山麓一帯。どこかで見たことがあるような集落。点在する家々。何か作業する人々の姿が小さく見えた。遠くの山々の稜線が見えた。眼下の緑に種類がありとてもきれいだった。

恐るおそる空を見上げると星が出ていた。途中で記憶が飛んでいるように思われるが、夢ではないという実感がある。

「帰らなくっちゃ」

芝生を横切り、家の方へ歩きながら途切れている記憶を呼び戻そうとしていた。バス通りの信号前に出た。トラックが通り過ぎた。常夜灯や人家から漏れる明りを見ながら今何時頃だろうかと思う。ポケットに手を入れ、スマホは持って出なかったのだろうか、と記憶をたどるが思い出せない。

最初に僕を連れて行ったのはあの方ではなかった。前の操縦席のような所に座っていたのは、アンドロイド・・。どの辺りで、縄文時代へ入ったのか。あの方と居たのはずっと縄文時代なのか。ただ、言われたとおりにしていたという漠然とした記憶はあるように思う。縄文からここへ戻る間に僕の脳が停止してしまったのか。今は、これ以上考えないようにしよう。

それにしても、あの方は仮面というか、宇宙服というかで被われていた。春利の脳裏に、八ヶ岳山麓で発掘された仮面の女神と縄文の女神の姿が交互に浮かんできた。

春利は、幹線道路の歩道を歩いていた。まもなく春利が住んでいる集合住宅へとつづく横道が現れる。

To Be Continued

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