eye

2016/02/06

八ヶ岳山麓

ミナが彼らの乗り物に吸い上げられ、プアビさんという高貴な存在から「架け橋」の依頼を受けたという話を聞いてから1か月が過ぎた。

春利の塾は補講をしない日曜日は休みにしていたが、ふだん来ている中学受験の生徒たちは大手の塾に模擬試験に行っていた。頭の隅で生徒の事が気にかかっていたが、その日春利は中央本線の車内にいた。

夢で信濃境駅が現れた。目覚めて、父の生家に比較的近いところみたいだという漠然とした捉え方だった。長野県諏訪郡にあり、JR東日本の中央本線駅であると同時に、東京方面からだと、山梨県を抜け、長野県に入って最初の駅で あることを今回改めて知った。

信濃境駅で降りた時、11時前だった。陽射しは雲で遮られていた。春利はジャンパーのチャックを喉元まで引き上げた。10月も半ば近くなると横浜よりだいぶ気温が低いんだと内心で呟いた。

目的の家は、夢にあらわれたカナの案内と、以前ミナのリモートビューイングを聞いたことが手掛かりだった。一般には、そうしたことを手掛かりに出かける人はいないかもしれないと春利は思ったが、真偽を確かめてみようと思った。

目指す家は、カナの父である渋江真佐雄の別荘だった。ネットでそれらしき場所を検索して手書きの簡単な地図を持って来た。迷わずに行かれれば徒歩で約15分位だろうか。

眼前に県道195号線と書かれた大きな白文字が見える。枝分かれした方へ行けば、井戸尻考古館や井戸尻遺跡へと向かうことがメモ書きで確認できる。春利が向かう家はそれらから1500mほど離れている辺りで、県道から数百メートル入った所あたりだろうか。夢に現れたカナが示したイメージを頼りに春利は歩を進めた。

県道195号線をどこまでも行くと20号線、さらに釜無川にぶつかるが、記憶の中の脇道はどれだろうと歩きながら春利は辺りを見回した。

遠くの方に八ヶ岳山麓の稜線が見え、県道から脇道へ入る辺りに松の古木があった。人家はまばらだったし辺りは草むらで平地のようだったが、途中から針葉樹の林に被われ、その向こうに突然あの洋館風の建物が現れた。春利は目が覚めてからも鮮やかに残っていた夢の記憶をたどった。

カナが現れたあれは単なる夢だったのか? それにしては鮮明過ぎる。別な空間、という思いがよぎる。しかし、以前早乙女さんがふれた所もこうした感じだったのでは・・。

不安な思いで県道を進むと、突然、一重まぶたで目元が涼しいあのカナの笑顔が浮かんだ。左側の口元にエクボが出来ている。

To Be Continued

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