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2016/03/20

夢のしらせ

秘密の家を後にした春利と父・荘太は信濃境駅まで歩いた。信濃境へ行ったら一度は父の生家に行ってみたいと春利は思っていたが、そのことはすっかり忘れていた。父もそのことにはふれず、やって来た上り電車に二人して乗った。

八王子で横浜線に乗り換え、荘太はそのまま家に戻ると言い、小田急に乗り換えるため町田で先に下車した。残された春利は地下鉄には乗りかえずに小机で降り、歩いて帰ることにした。

幹線道路沿いに歩きながら、父さんも疲れたんだろうな、と父の顔を思い出した。確かに、偶然にしては出来過ぎている。あの方は、と春利は上空に眼をやった。雲間に青空が見えたが、空飛ぶ物体は眼に入らなかった。

家の近くまで歩き、いつも入るすき家の丸い椅子に掛けるとどっと疲れがやって来た。小中学生相手の塾の方は毎日それなりの気遣いが必要だったが、生きざまを脅かされるようなことはなかった。そのことが救いだった。子供たちと接していると、年の離れた兄弟のようでもあり、家族のようでもあった。父兄からの連絡票を読んでいると、自らの子供時代と重なり、家族の大切さを実感し、この地球という星で生活していることに喜びを感じた。風呂に入り、その夜は熟睡できた。

塾の方は大きなハプニングもなく進めることが出来たが、11月の末近くになって理解不能の夢をみた。夢の中では、生徒から質問された期限付きの問題に取り組んでいた。容易に答えが導き出せず必死に考えていた。目覚めた時、現実にはそうした問題はなく、日曜日でありその日生徒の補習もないことを思い出した。しかし、不可解な思いは夢から覚めてから春利の中で増幅していった。

夢の中で、生徒の背後でずっと春利を見つめている存在があった。

「あれは、誰だったのだろう?」ベッドで上体をおこして夢の中の存在を追った。どこかで会ったような気がしないでもないが思い出せなかった。人は、見ず知らずの人の夢をみることがある。実際は、会ったことがある人が別の姿かたちで現れたのか、それとも、相手の方が何らかの目的で会いに来たのか。夢とは、そもそもわけが分からないものかもしれないけれど、ほんとうは根拠のあるものなのかもしれない。

夢の中に現れた人が誰かは分からなかったが、夕方になり、外食に出かけて戻ってくると、パソコンに一通のメールが届いていた。

石橋梨花。春利の頭の中を一抹の不安がよぎった。

To Be Continued

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