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2012/03/25

新横浜駅前公園

桑田荘太は小田急で町田に出て横浜線に乗り換えた。ドアが開き、出入り口に近いところに座っていた乗客が降りて行った場所に桑田は座った。

師走の31日だが車内の席は半分以上埋まっていた。電車に乗ろうと思うと、東京方面ではなく横浜へ向かうことが多かった。

新横浜で降りるとスタジアム(横浜国際総合競技場)の方へ自然と足が向かった。鳥山川のこちら側が新横浜駅前公園で川向うのスタジアム周辺が新横浜公園と呼ばれているが、視界が開けた中央に円形のスタジアムが浮かび上がっている。

いつもメガネを掛けている桑田だが、数年前からアイボリーのキャップを被るようになった。冬場は羽毛入りの黒いジャンパーを着て外出することが多い。10年も前に買ったそれをその日も着ていた。60代になってからは毎冬毛糸の手袋も欠かせない。

桑田は鳥山川に沿って続く広い歩道に出た。自転車が通り過ぎ、犬を連れた若い女の子が向こうからやってくる。師走のおおつもごりと言えども愛犬の散歩は誰かがしなければならないから、公園を散歩すると必ず彼らに出会った。

川側にはミッドナイトブルー色に塗られた金属製のフェンスがつづき、反対側の公園には桜やドングリの実がなるブナ科の樹木や灌木がある。道沿いに木製のベンチが並び、アメリカンスィートガムの実が落ちている。

桑田は汚れの少ないベンチで一休みしようと思った。近くの一つに男が一人座っていたが、善良そうに見えたので隣のベンチに座った。

すると、道の向こう側の平行して延びているポールの下に一匹の猫が現れた。川の土手の下の草むらにいたのだろう。丸く肥えていて白い毛のところどころに黒い部分のあるぶち猫だった。

隣のベンチの男はしばらくぶち猫を見ていたが、何か声を発して立ち上がり猫の側に行くとしゃがんだ。手に持っていた白いビニールの手提げ袋から模様のついた小さな袋を取出し、封を切るとコンクリートの表面を手で拭い、袋を逆さにして中身をふって出した。

猫は散乱した小さな固形物を口と舌で上手に吸い取っていった。


To Be Continued

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