eye

2016/11/14

新たな遭遇

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梨花の頬が春利の顎にふれた時、春利の脳裏に来未の顔が浮かんできた。

春利は眼をつむった。すると、来未と向き合っている女性がいた。どこかで会ったことがあると記憶を追った。シャンハイの公園で来未と一緒に現れた女性だった。春海さん。春利は心で呟いた。

「沢さん。どうしました?」

「いえ」

「もしかして、来未のことを思いだしていない?」

「ええ。いま、津波に呑み込まれて行った来未と友達が浮かんできたんです」

「春海さんが。二人は何か言ってました?」

「いえ。二人が向き合って何かを話していた。福島の久ノ浜の春海さんの家だろうか」

「来未は運が悪かったのね。地震と津波があった日に帰省するなんて」

「梨花さんは、おとうさんやおかあさん、かけがえのない存在をすべて失って」

春利の頬に冷たいものがふれた。梨花のこらえる息づかいがすぐ側で聞こえる。

「ほんとうに人の未来は分からない」

「沢さんの場合、後から幸せがやってくるのかな」ハンカチで涙を拭いた梨花が遠くを見る目で言った。

「僕が、父と再会できたことは、何か不思議な気がする。見えないところで、別な力が働いているような」

「そうね。私はあの乗り物には一度も乗ったことがないけれど、沢さんは違っている。それに早乙女さんも」

そこまで聞いた春利はスマホを取りに立ち上がった。

To Be Continued

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