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2017/03/02

テレパシー (Telepathy)

「沢さん。じゃあ、私は今日はこのくらいで。明日の準備もあるでしょうから」

「ミナさんは、大学の講師を辞めて、完全なフリーになったんですね」

「フリーと言っても、英書の翻訳はやっているけど」

「それ、小説ですか?」

「ええ。実は、以前から翻訳はやっていたのよ」

「それは初耳だなあ。それに何より、ミナさんが別名で小説を書いていたなんて、前回のメールで初めて知りました。どんなの書いたんですか?」

「興味がある?」

「それはありですよ」

「じゃあ、送っておくわ」

「いえ、本のタイトルと出版社名を教えてもらえば購入しますよ。その方が良いでしょう。あそうだ、ペンネームも」

「今だったら、書店にあると思うから。ラインの方に送っておくわ」

二人は鶴見川よりにある人工池の入口にかかっている小さな橋を渡り、草地広場と呼ばれる広い芝生を歩いて行った。

「この公園はほんとうに広いわね」ミナは左手にそびえる円形のスタジアムを見上げながら言った。

「そうですね。鶴見川の遊水地を利用した多目的公園で、横浜市では一番広いようです」

「私はこれから武蔵野に帰るけど、数日はこちらにいるから、ラインで連絡もらえば、早く返事が出来ると思うわ」

その日春利は地下鉄駅までミナを送り、改札の10メートルほど手前で握手した。別れてから、ミナの白くて柔らかい手の感触がよみがえってきた。

ミナさんは、テレパシーを送って来たのが誰なのか知っているんではないだろうか。明日、授業が終わった後にもう一度公園へ行って見ようか。「あした行くよ!」とミナの声で届いたメッセージを小声で呟いた。

To Be Continued

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