eye

2012/08/14

上海へ

春利が退社のタイムカードを押しに行った時、ドアの向こうにちらっと来未の後ろ姿を見たような気がした。タイミングが良ければ帰りがてら話せるかと思った。

しかし、駅に向かう通りには来未の姿が見当たらなかった。同僚とどこか寄り道かそれとも来未ではなかったのかな、と春利は思った。

携帯で連絡するかメールをしようかと迷っているうちに名古屋駅に着いていた。明日は土曜だから来未の賃貸マンションがあるあおなみ線に、とも思ったが、なんだか調子が良すぎるような気がして、アパートへ向かう地下鉄に足が向いていた。

乗る前に電話しようと思ったが、同僚といっしょかもしれないからとためらった。

星ヶ丘で降りると、家に着いてからと歩き出していた。

アパートに着いて着替えると、とうとう上海か、と呟き、ミニコンポのCDボタンを押した。
浜田省吾の「もう一つの土曜日」が流れた。いくどか聴いたことがあったが、春利が買ったものでないことは確かだった。

ミニコンポは、春利が高校に入学した時、叔母のとし子がプレゼントしてくれたものだった。その頃だったろうか、尾崎豊と浜田省吾のCDが棚にあるようになった。母・さなえかかもしれないが、それがそのまま横浜から名古屋のアパートにに運ばれていたのだ。

「もう一つの土曜日」の歌詞が、いつになく春利の心に絡みつき染み入った。
春利は携帯を手に来未へつながるボタンを押した。

「あっ、はい」3回目のコールで返事があった。


To Be Continued

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