eye

2013/09/14

石橋梨花と

「来未は、沢さんのいる上海へ行けばよかったんだわ」一口飲んだコーヒーカップを戻した梨花の視線がふたたび春利に向けられた。

春利はいったん視線を合わせたが突いて出る言葉がなかった。上海へ行く前に結婚式をあげ、来未を連れていくことは出来なかっただろうか。相談すれば、会社も認めてくれたように思われる。やっていかれるという自信がなかった。もう少し様子を見たかったのだ。

「沢さんは、来未と結婚する気はあったのだぁ~か?」

「すみません。もう少し状況が落ち着いたらと思って」

「落ち着いたらって?」

「収入面でも精神的にも、やっていかれるっていう確信みたいなものが欲しかったんです。今更と言われそうですが、上海へ行く前に思い切って結婚式をあげて、連れていけばよかったと思います」

「気持ちとしては、来未がどこかで生きていてほしいと思うけど、両親もだけど、あの地震から一カ月以上も連絡が取れないということは・・」

「申し訳ありません」

「いえ、私の言いすぎですね。今度のような巨大地震があの日に起こるとは。津波も原発も、ほんとうに突然のことで。それは沢さんの責任ではありませんから」

それにしても、来未があの日福島へ帰りたくなったのは、自分が原因していないとは言えない、来未は自らの将来に不安をいだき、両親の顔を見たかったのかもしれない・・。

「沢さん・・」今度は梨花が手を差し出すジェスチャアで春利に目の前の食事をうながした。


To Be Continued

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